看護師
公開日:2025/07/11 最終更新日:2025/07/11
訪問看護の役割とは?いま必要とされる理由、病棟看護師との違いなど【体験談あり】
「訪問看護師は、どこで、誰のために、どんな風に役立っているのだろう」そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。
訪問看護師は、病気や障がいを持った方が、住み慣れた場所で安心して毎日を送れるよう、看護師がご家族も含めてサポートする仕事です。
社会が求める訪問看護師の役割とは
社会情勢の変化から生まれた「地域包括ケアシステム」
日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。2025年には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療と介護の需要が急激に増加することが予想されます。
このような社会情勢の変化を受けて、国は2000年代から「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供されるシステムです。
医療の考え方の根本的な変化
従来の医療は「病院で治療を受けて、治ったら終わり」という考え方が中心でした。しかし現在では、特に高齢者や、慢性的な病気を持つ人にとって病気や障がいは「完治するもの」ではなく、「退院後も継続的にケアをして付き合っていくもの」という考え方に変わってきています。
高齢者の「住み慣れた自宅で療養したい」「最期まで自宅で過ごしたい」というニーズも年々増加しており(※)、病院での治療後も、自宅で継続的な医療ケアと生活支援を受けながら、その人らしい生活を送ることが重視されるようになりました。
※ 出典:厚生労働省 「人生の最終段階における医療に関する意識調査」 P. 49-50 (2018年)
需要急増に供給が追いつかない現状
実際のデータを見ると、訪問看護への需要の高さが明確に表れています。
厚生労働省の調査によると、訪問看護事業所の看護職員は2020年には6.8万人でしたが、2025年には11.3万人が必要とされており、4.5万人もの需要増大が見込まれています(※1)。
また、都道府県ナースセンターにおける領域別看護職員の求人倍率を比較すると、「訪問看護ステーション」の求人倍率が3.22倍と最大になっており、訪問看護の業界では、需要に供給が追いついていない状況と言えるでしょう(※2)。
※1 出典:厚生労働省医政局「看護職員確保の取組について」2021年4月 P.6
※2 出典:※2 内 P.7 日本看護協会「2021年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」より
地域包括ケアシステムにおける訪問看護師の具体的役割
このような社会的背景を受けて、訪問看護師は地域包括ケアシステムの中で以下のような重要な役割を担っています。
医療と生活をつなぐ専門職として
病院では医療処置が中心でしたが、在宅では生活全体を視野に入れた包括的なケアが求められます。訪問看護師は医療的な専門知識を持ちながら、患者様の「その人らしい暮らし」を支える役割を果たします。
地域の多職種をつなぐ調整役として
医師、ケアマネジャー、ホームヘルパー、理学療法士など、さまざまな専門職が関わる在宅療養において、訪問看護師は中心的な調整役としての役割も担います。
24時間365日の安心を提供する存在として
緊急時のオンコール対応により、患者様とご家族に「いざというときは看護師に相談できる」という安心感を提供します。
訪問看護の3つの役割:医療的ケア・生活支援・精神的ケア
医療的ケアの役割
訪問看護師の基本的な役割の一つが、医療的ケアの提供です。具体的には以下のような業務を行います。
・バイタルサイン測定(血圧、体温、脈拍、呼吸状態の確認)
・服薬管理と薬剤の効果・副作用の観察
・点滴・注射管理
・褥瘡処置や創傷ケア
・カテーテル管理(尿道カテーテル、胃ろう他)
・人工呼吸器管理 ・病状観察と早期発見、医師への適切な報告 など
これらの医療処置を通じて、患者様の健康状態を維持・改善し、病状の悪化を防ぐことが重要な役割となります。
生活支援の役割
訪問看護師のもう一つの重要な役割が、患者様の日常生活を支えることです。病院では見えなかった「その人らしい暮らし」を支えるために、以下のような支援を行います。
・日常生活動作(食事、入浴、排泄など)の維持・向上支援など
・住環境の安全確保と転倒予防のための環境整備
・福祉用具の選定と使用方法の指導
・ご家族への介護指導と相談対応
・栄養状態の改善と食事管理のアドバイス
・リハビリテーション・機能訓練 など
医療的な観点だけでなく、生活の質(QOL)の向上を目指し、患者様が可能な限り自立した生活を送れるよう支援することが重要です。
精神的支援の役割
訪問看護師は、患者様の心の支えとしても重要な役割を担っています。
・病気や障がいに対する不安や孤独感の軽減
・精神的なケアとカウンセリング
・ご家族の精神的負担の軽減と支援
・終末期における緩和ケアと看取り支援
・生きがいづくりや社会参加への後押し など
長期間の療養生活では、身体的な問題だけでなく、精神的な支えが非常に重要になります。訪問看護師は専門的な医療知識を持ちながら、人として患者様に寄り添う存在として期待されています。
訪問看護師ならではの、深い信頼関係の構築
環境の違い
訪問看護最大の特徴は、患者様の「生活の中」で看護を行うことです。病院という医療機関ではなく、長年暮らしてきた自宅や施設で、生活に密着したケアを提供します。
慣れ親しんだ環境での看護は、患者様に心理的な安心感をもたらし、より自然な状態でのケアが可能になります。また、患者様の生活習慣や価値観、ご家族関係なども含めて総合的に理解することができます。
時間軸の違い
病院では短期間で治療をメインの目的としますが、訪問看護では退院後の支援から、長期的に支援を行うのが目的です。リハビリを行う期間や慢性期、そして終末期まで、患者様の人生のさまざまな段階に寄り添い、じっくり向き合います。
1回の訪問では30分から1時間程度をかけて、対話を大切にしながらケアを行います。日々の関わりを通して、表情や言葉の端々から、その方の本音や生活上の悩みに気づくこともあります。
関わり方の違い
訪問看護師は、患者様・ご家族の「伴走者」としての役割を担います。医療的な処置を行うだけでなく、自分らしい生活を続けていくための、自立支援を重視したアプローチを行います。患者様の持っている力を最大限に引き出し、「選択肢を増やす」支援を通じて、生活の質の向上と自己実現を後押しします。
また「これ以上の治療は難しい」と判断された終末期の患者様には、必要な医療処置以外にも、痛みや心理的な不安を取り除くための緩和ケア、できることが制限される中でも自分らしく過ごすためのサポートなど、最期の瞬間まで伴走します。
訪問看護師の対応範囲と1日の流れ
多様な疾患・医療的ニーズを持つ方をサポート
訪問看護では、年齢や疾患を問わず幅広い患者様に対応します。
・高齢者の慢性疾患管理(糖尿病、高血圧、心疾患など)
・小児の在宅医療(人工呼吸器装着児、重症心身障がい児など)
・精神科訪問看護(うつ病、統合失調症、認知症など)
・ターミナルケア(がん末期、難病の方の看取り支援など)
・急性期退院後の継続ケア など
一人の看護師がさまざまな疾患や年齢層の患者様を担当するため、知識や柔軟な対応力を身につけていく必要があります。
一日のスケジュール例
訪問看護師の1日は、朝のミーティングから始まります。
9:00 | 出勤・朝礼 ステーションに出勤し、担当する患者様の状況確認や注意事項の共有を行います。 |
9:30〜11:30 | 午前の訪問(2〜3件) 患者様のご自宅を訪問し、健康状態の確認、医療処置、生活支援を実施します。 |
12:00〜13:00 | 昼休憩 ステーションに戻って昼食休憩。同僚との情報交換も行います。 |
13:30〜16:30 | 午後の訪問(2〜3件) 午後も引き続き訪問を行い、各患者様に応じたケアを提供します。 |
17:00 | 帰社・記録作成 訪問記録の作成、医師やケアマネジャーへの報告・連絡、翌日の準備を行います。 |
18:00 | 終業 夜勤はありませんが、緊急時にはオンコール対応があります。 |
※1日の仕事の流れを動画で観たい方はこちら
医師、ケアマネジャー、薬剤師…多職種連携も重要な役割
医師との連携
訪問看護では、主治医の「訪問看護指示書」に基づいて作成された「訪問看護計画書」に沿ってケアを行います。緊急時には迅速に医師と連携し(オンコール)、指示を仰ぎながら適切な医療処置を行います。
そして定期的に「訪問看護報告書」を提出し、患者様の状態変化を共有します。この報告書が、医師による治療方針の調整や、薬剤の変更などの医療判断のサポートとなります。
ケアマネジャーとの連携
介護保険を利用している患者様については、ケアマネジャーと密接に連携します。ケアプラン作成への参画、サービス担当者会議での情報共有、他のサービス事業者との調整などを行います。
介護度の変更など患者様の状態変化に応じて、必要なサービスの追加や変更を提案し、最適なケア体制の構築を支援します。
その他専門職との連携
地域医療では、多くの専門職がチームを組んで患者様を支えています。
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(リハビリテーション)
・薬剤師(服薬指導、薬剤管理)
・栄養士(栄養管理、食事指導)
・社会福祉士(社会資源の活用、生活相談)
・介護福祉士、ホームヘルパー(日常生活支援) など
訪問看護師は、これらの専門職との情報共有や連携調整を行い、患者様にとって最適なケアが提供されるよう努めています。
先輩が語る「転職して分かった、訪問看護の役割」
実際に病院から訪問看護に転職したソフィアメディの先輩たちは、どのような役割の変化を実感しているのでしょうか。
N.Aさん(ステーション代田・管理者、病院勤務20年以上からの転職)は次のように語ります。
「病院は『病気を治すための処置』が大きな目的であるのに対し、訪問看護は『患者様の望む生活をできるようにすること』が第一です。つまり、病気だけではなく、その方の人生にフォーカスし、患者様が望む生活が送れるよう必要なケアやサポートをします。
訪問看護では患部を徹底的にケアすることを最優先するのではなく、『次にヘルパーさんが入るまでに、患者様が安全に過ごせるように』など生活に重きを置いた視点で、患者様が本当に必要としているところを重点的にケアしていく。その重要性を、現場に行き始めてから学びました」
K.Hさん(ステーション学大、病院勤務5年からの転職)も、役割の変化について実感を語ります。
「一つ目は治療後の生活までサポートできるという点です。特に、病院に入院する患者様の中には完治しないまま退院していく方もいらっしゃるため、その後きちんと生活ができているかが気になっていました。訪問看護では病院から戻られた後の生活までサポートできるため長期的にお付き合いしていくことができます。
二つ目はご自宅での看護であるため、患者様の『素』の顔が見られるという点です。病院では外行きの顔しか見せない方でも、家にいるときはその方らしさが現れます。『素』の顔を見ることで、良い点も悪い点もその方を理解することができますし、より身近な存在になれるというのは、訪問看護をおすすめできる点ですね」
このように、先輩たちが共通して感じるのは「治療中心から生活中心への看護観の転換」です。病院では医療処置が中心でしたが、訪問看護では患者様の人生そのものを支える役割へと大きく変化していることがわかります。
ソフィアメディでは、この役割変化について「病院看護と訪問看護の違いとは?」と「患者やご家族のニーズに応じた退院支援、訪問看護師に求められる役割」でも詳しく解説しています。
これからの社会に欠かせない役割、訪問看護師。ソフィアメディではじめませんか
私たちの理念「英知を尽くして『生きる』を看る」
「英知を尽くして『生きる』を看る。」は、社員の入社理由第1位となったソフィアメディの理念です。医療の提供だけでなく、お客様一人ひとりの「生きる」を支援する役割を担っているという考え方が、多くの看護師の共感を呼んでいます。
私たちは「お客様第一主義に徹し、常に相手本位に行動する。」という行動指針のもと、一人ひとりの人生に寄り添う看護を実践しています。科学的根拠に基づいた専門的なケアと、人間性豊かな関わりの両立を大切にし、地域全体を支える使命感と責任を持って取り組んでいます。
80%が未経験スタート。充実のサポート体制
ソフィアメディでは、約80%の看護師が訪問看護未経験からスタートしています。充実したサポート体制により、安心して新しい役割にチャレンジできる環境を整えています。
・4日間の新入社員研修(理念理解+基礎知識修得)
・厚生労働省「新人看護職員研修ガイド」準拠の学習プログラム
・教育担当者(メンター)制度による個別サポート
・チーム支援型サポート(複数の先輩がフォロー)など
12カ月間の継続的な教育プログラムにより、段階的にスキルアップできます。
働きやすさを支える制度
訪問看護師として長期的に活躍していただくため、さまざまな働き方支援制度を整備しています。
働き方支援制度「WOW!(Work for Our Wonderful life!)」
・夜間タクシー利用制度(22時以降の緊急出勤時)
・引越支援金制度(上限20万円までの引越費用支援)
・夜間訪問後のインターバル制度(翌日4時間分の代休取得可能)
・ベビーシッター費用補助(会社指定企業利用時半額補助)など
「ここいろ社員」制度
・育児・介護中の負担軽減 ・オンコールなし
・土日祝休みの選択可能
・時短勤務制度(小学3年生まで) など
あなたの看護師としての新たな役割が、ここから始まる
訪問看護師として地域で活躍したいと考える方を、私たちは心からお待ちしています。
まずは気軽にステーション見学や説明会にお越しください。実際の雰囲気を感じていただくことで、新たな一歩を踏み出す勇気が湧いてくるかもしれません。
詳しい求人情報や説明会の日程は、以下のリンクからご確認いただけます。
職種紹介・福利厚生・教育研修・スタッフの声などが詳しく掲載されている、ソフィアメディの求人サイトもぜひご覧ください。