総合病院での長年の経験を経て緩和ケアに関心を深め、訪問看護師への道を選んだN.Yさん。現在はソフィアメディで管理者として、スタッフがケアに集中できる環境を整えつつ、緩和ケア認定看護師としての活動も積極的に行っています。スタッフが働きやすい職場作りや、看護師が緩和ケアの専門知識を身につける意義などについて伺いました。
「こんな形のお看取りもあるのか」緩和ケアとの出会い
緩和ケア認定看護師を目指したきっかけを教えてください。
Nさん:もう20年ほど前の話です。最初に勤めた総合病院では、亡くなる寸前まで治療を受けて病院で息を引き取る方が多く、「これでいいのだろうか」と感じることがありました。穏やかに見送れる方もいれば、どこかモヤモヤが残る方もいて、その違いが気になっていました。
その後に勤務した老人保健施設で、がん患者の方がとても穏やかに最期を迎えた場面に立ち会いました。点滴や痛み止め程度のケアだけで過ごされていて、「こんな形もあるのか」と驚き、緩和ケアに強い関心を持ったのです。病院勤務に戻った際に緩和ケア認定看護師の先輩と出会い、自分も資格を取得しました。緩和ケア病棟で働くなか、「最後は家に帰りたい」と願う患者様に複数出会ったことで在宅での看取りを経験したいと思い、訪問看護の道へ進むことにしました。
認定看護師の資格を取得して、変化はありましたか。
Nさん:何が違うかというと、自分のケアに根拠を持ったり、意味付けができるようになったことが一番大きいです。自信を持ってケアができるようになることは、看護師にとってとても大事なことです。
ソフィアメディに入社した経緯を教えてください。
Nさん:初めて訪問看護の仕事をしたのは、在宅緩和ケアクリニック併設のステーションで、在宅緩和ケアをしっかり学べました。その後は看護師が立ち上げた小規模ステーションに転職しました。やりがいはありましたが、事務スタッフがおらず看護以外の作業がとても多かったのです。配偶者の転勤で東京へ引っ越す際、もっと看護に集中できる職場を探しました。ソフィアメディなら事務サポートや本社のバックアップ体制がしっかりしているだろうと思い、入社しました。
ソフィアメディに転職して良かったと思うことはありますか。
Nさん:一人で悩まなくて済むことです。相談できる部署があったり、エリアマネージャーの上司がいたりするので、モヤモヤを抱えずに勤務できます。事務作業を別の方にお任せできるといったメリットもありますが、「仲間がいる」ということが自分にとっては最も大きいです。
管理者としてスタッフを支える。スタッフが、お客様の人生を支える。
Nさん:ステーション小金井が担当するお客様は200名ほどです。契約時にはまず私がケアの方向性をお話しし、実際の訪問看護はスタッフが行います。管理者は基本的に自分では訪問しないですが、訪問するスタッフを通してお客様の人生、生き方を支えられる仕事だと思っています。スタッフがケアに集中できるよう環境作りやシステム作りをするのが管理者の仕事です。
管理者ならではのやりがいを教えてください。
Nさん:スタッフとお客様の関係性や、ケアの変化を俯瞰して見られます。たまに訪問するとお客様の調子がすごく良くなっていることを感じます。スタッフの力を実感できるのがとても嬉しいです。
スタッフがしっかり仕事に集中できるようどのようなことをされていますか。
Nさん:スケジュール管理が一番大きいです。業務がハードになりすぎないよう、訪問スケジュールに余裕を持たせています。お客様の容体によっては2名で訪問できる体制を組むこともあります。
それでも少しハードになってしまう場合は、ステーションに看護師が戻った際に「どうだった?」と声をかけ、一緒に振り返るようにしています。育児中のスタッフが多く「子どもが熱を出した」といった急なお休みも発生するため、お互いさまの気持ちでフォローし合える調整をしています。
また夜中のオンコール対応があった場合、翌日は休暇が必要です。朝起きたらすぐ記録を確認し、夜間対応したスタッフがいれば午前休にするよう、スケジュールを調整します。
31ページのハンドブックを作成。全社の看護師たちを助ける
現在、緩和ケア認定看護師としてどのような活動をされていますか。
Nさん:ソフィアメディ全体では、緩和ケア認定看護師は4名になりました(2025年9月時点)。緩和ケアが苦手、お看取りに自信がないと言った現場の声に対して活動を始めたところです。今年は、緩和ケアのハンドブックを認定看護師全員で作りました。それを活用してもらいながら、現場にヒアリングを続け、少しずつ緩和ケアの底上げを図っている段階です。
緩和ケアの専門知識はどのような場面で活かされますか。
Nさん:痛みにはさまざまな種類があり、病態に応じた対応策があります。病気だけでなく精神的な要因や家族関係の問題が影響し、痛みに繋がっている場合もあります。終末期の方を前にすると「何もしてあげられない」と感じる看護師もいますが、薬以外にも温める、マッサージ、体位変換などの方法もあります。精神的なものが起因している場合、傾聴することも痛みの緩和に繋がるかもしれません。このように多方面からアセスメントし、アプローチを学んで自分のケアに活かせるようになることが、緩和ケア知識の大きな意義だと思います。
緩和ケアは「特別」ではない、看護師みんなができるケア
Nさん:緩和ケアは確かに終末期に必要なことが多いですが、決して特別なものではなく、看護の基本的な部分だと思っています。緩和ケア認定看護師資格を持っている人はできて当たり前ですが、そうでない看護師でも、緩和ケアに必要な視点を持っていれば可能です。皆が緩和ケアをできるようにしていくのが認定看護師の重要な役割です。
死を前にした方に「こんなこと言っていいのかな」と悩んだり、お客様から「私はもう死んじゃうんでしょ」と言われてどうお答えしていいかわからなかったなど、看護師たちは悩みながら終末期のお客様に向き合っています。苦手に思わないよう、力を貸してあげたいです。
訪問看護に興味はあるけれど、転職するか迷っている方にメッセージをお願いします。
Nさん:訪問看護は、お客様と一対一で、じっくりと向き合える仕事です。病院では治療が中心となり、時間に追われて「看護をやり切った」という達成感を得にくいこともあります。その点、訪問看護は看護師自身の力で、お客様に満足いただけるケアを提供できるのです。1時間しっかり寄り添うなかで「ここまでできるんだ」と実感できるのは、この仕事ならではだと思います。看護師としてさらに力をつけたい方には、ぜひ経験してほしいです。
訪問先で出会うお客様に「人生で一番楽しかった瞬間は?」と尋ねると、皆さんが「動けるうちに好きなことをやることだ」と仰います。人生は一度きりで、時間もあっという間に過ぎていきます。やりたいことを仕事にできるのは、とても幸せなことです。興味があればぜひ挑戦してみてください。新しい自分に出会えるはずです。