クリニック・急性期・回復期などさまざまな医療機関で幅広く経験を積み、どの職場でも常に問題意識と学習意欲を保ち続けてきたIさん。認知症看護を経験する中で、住み慣れた自宅で行う治療やケアの大切さを実感します。キャリア20年以上のベテランがソフィアメディに転職した理由、この先さらに身につけたい知識などについて伺いました。
認知症看護の中で、強く実感した「在宅ケア」の重要性
—「認知症看護認定看護師」の資格をお持ちかと思いますが、なぜ資格を取得されたのですか?
Iさん:認知症が原因で、興奮して暴れてしまう患者様に、仕方なく鎮静剤を飲んでいただくと、今度はボーッとして食事も取れなくなり、リハビリもできない。そういう場面に何度か遭遇しました。認知症による興奮や攻撃性の症状を、薬に頼って抑えることに葛藤があり、看護協会主催の研修に参加するようになりました。そこで自分の知識不足を痛感し、認知症看護認定看護師を目指すことにしたんです。
—その後、「訪問看護師になろう」と思ったきっかけ、理由はどんなことですか。
Iさん:実は認知症看護認定看護師になる前から、訪問看護には関心を持っていました。患者様の中には、薬の管理が全くできず、食事の準備やお風呂など日常生活にも困難があっただろう、という方もいました。入院時の申し送りで、その方が「家で一人暮らしだった」と聞くと「ご自宅でどうやって暮らしていたんだろう、在宅ケアをしている人がいるのだろうか」など、考えることがありました。また、退院してご自宅に戻られた患者様に外来でお会いすると、入院中と比べて大変穏やかになっていたこともあり、在宅での治療やケアには何か秘められた力があるのではと想像していました。
認知症がある場合、退院後の行き先としては施設入所が優先される傾向があります。しかし、ご本人は「家に帰りたい」との想いを持っている場合もあります。認定看護師の資格を取得し、何よりもご本人の意思を尊重することが重要だと学びました。高齢化が進み認知症の患者数は増加していますが、病院や施設のキャパシティには限界があります。また病院や施設では、その場所のルールに合わせていただく必要があり、ご本人らしさが制限されてしまうこともあります。認定看護師として活動しながら、在宅支援の大切さを強く実感するようになり、訪問看護師に転身しました。

病棟勤務時代に院内勉強会の講師を務めるIさん
— 訪問看護師と、病棟看護師の違いはどこにありますか。
Iさん:一番違うと感じたのはナースコールです。特に回復期リハビリテーション病院では、できるだけ患者様ご自身でトイレに行くという目標があり、そのサポートのため夜中でもコール対応に走り回っていました。訪問看護では夜勤がなく生活のリズムが整うため、身体にあまり負担がかからずありがたいです。オンコールについては、お客様に対して訪問を重ねる中で事前に「オンコールがあるかもしれない」とわかることも多いです。お客様やご家族が夜中に不安にならないよう、日中にしっかり対応するよう心がけています。
また訪問看護は、想像以上にお客様に深く関わる、その方の「生活に入っていく」仕事だと思います。ご自宅ごとに物品の置き場所も違えばケアの内容も全く違う。病院では患者様の方が病院に合わせることが多いですが、訪問看護では私たちがお客様の生活に合わせて寄り添います。訪問中は、その方のケアをじっくり行います。密に関わる時間が長く、認知症の方も看護師の目がご本人のみに向いている安心感があり、入院中よりも穏やかになるのかもしれません。
現場では一人。でも、チームでお客様を支えている感覚
—現在のお仕事の中で、「これがやりがいだ」と思うことを教えてください。
Iさん:まず、地域の多様な職種の方々と連携できることです。病棟看護師時代は、他の病院や訪問看護との連携など、外部との関わりに参加する機会がありませんでした。今は病院とはまた違ったチームでお客様を支えている感覚です。一人のお客様に対して医師の訪問診療があったり、ケアマネジャーが訪問したり、ヘルパーがサポートしたりと、さまざまなプロフェッショナルがお客様の生活を支えています。
訪問看護師になる前は、「現場では一人」ということに不安がありました。病院では周りに他の看護師がおり、また電話すればすぐ医師が来てくれる環境だったため、一人ですべてを判断する必要はなかったからです。しかし訪問看護で実際に働いてみると、何かあった時には管理者に連絡して指示を仰いだり、医師に連絡して対応を確認したりと、その場では一人かもしれませんが皆さんの助けがあることが分かりました。今ではもう、不安はありません。
生まれ育った町で訪問看護師として働く。キャリアを活かして故郷に貢献したい
Iさん:年齢を重ねる中で、地元に貢献したいという思いも芽生えてきました。私が働く朝霞は、私の出身地の新座市に隣接しており、地元に貢献できていることにやりがいを感じます。訪問看護では、土地勘があることも強みになります。市役所から認知症に関する勉強会の企画運営に関して依頼もいただき、大変嬉しく思っています。
—現在のお仕事の中で「以前と異なり、大変だ」と思うことはありますか。
Iさん:病院のように同じ施設内に連携機関が集まっているわけではないので、タイムリーに連携を図るのが大変だと感じることはあります。情報共有にはMCSなどのアプリ(メディカルケアステーション。即時性のあるチャット機能を中心とした医療従事者間のコミュニケーションツール)を活用したり、電話で連絡を取ったりします。医師、看護師、ヘルパーなど関係者全員がお客様の状況を密に共有することで、ケアの質が落ちないよう工夫をしています。
—「ソフィアメディに入社して良かった」と思うことがあれば教えてください。
Iさん:ソフィアメディでは、スタッフ一人ひとりがとても大切にされていると実感しています。困ったことがあれば、事業所全体で問題として取り組んでくれますし、エリアプロデューサー(複数のステーションを横断管理する役割)や本社スタッフなど、相談できる窓口もたくさんあります。会社としてのサポート体制がしっかりしていることがメリットだなと思います。
—ソフィアメディでの、今後の展望を教えてください。
Iさん:現在、市の認知症啓発活動への参加や特定行為看護師資格(あらかじめ受けていた包括指示に従い、医師の判断を待たず一定の診療補助業務を実施できる看護師)を目標として考えています。この資格がどのように地域で、また訪問看護の仕事で活かしていけるかを考えながら、キャリアを組み立てたいと思っています。
—未経験で訪問看護ができるかな……と不安に思っている人に、メッセージをお願いします。
Iさん:私もまだまだ勉強中ですが、わからないことはその都度確認しながら、少しずつ覚えています。会社内での勉強会やセミナーの機会も多く、知識を補完していく環境も揃っているので、不安に思わず飛び込んでみてください。