病院での15年間のキャリアを経て、2024年4月にソフィアメディに入社し、ステーション福岡東へ配属、未経験から訪問看護師として新たな道を歩み始めたMさん。ICUでは既にベテランとなっていた彼女は、なぜ訪問看護という未知の世界を選んだのでしょうか。「キュア」から「ケア」中心の看護に変化する中で感じるやりがいや発見、そして未経験から訪問看護師への転職を考えている方へのメッセージなどを伺いました。
「治療中心」から「生活を支えるケア」へ。自らの判断力が磨かれる仕事
—転職して「訪問看護師になろう」と思ったきっかけは?
Mさん:じつは私の勤務していたICUには、一度退院された後、再入院される患者様が多かったのです。病院では食生活などを管理されるため、一旦は良くなる。けれどご自宅で自由に暮らす中で、喫煙をしたり甘いものを食べすぎたりしてまた症状が悪化し、命に関わる状態になって再度搬送されてしまう。訪問看護師がご自宅でもケアしたり指導に入っていたら、こういうことは起きないのではと思うようになりました。
先輩たちの勧めもあり、訪問看護に興味を持つようになりました。病院には訪問看護部門もあったので異動を希望しましたが、職場と自宅の距離が遠く、休日や夜中のオンコール時に対応できないため実現しませんでした。それでも「病院の、その先にある生活やケアをもっと知りたい」という気持ちは強かったです。
またICUでは、夜勤が連日続くこともあり身体に負担が大きく、35歳頃の時に「このままでは自身の健康を損ねてしまうかもしれない」という不安がよぎり、別の職場に移ろうと思い転職を決めました。

ICU勤務時代のMさん
—転職してみて、病院看護と訪問看護との違いは感じましたか?
Mさん:病院では「治療(キュア)」が中心でしたが、訪問看護では「生活を支えるケア」が中心になります。ご自宅というリラックスした環境の中で、その方の生活全体を見ながら関わっていくという点に、大きな違いを感じています。
ICU時代は目の前のことに必死で、「キュア」の先まで見据えた看護ができていませんでした。訪問看護師に転身した今だからこそ、「退院してからも、栄養指導や食事管理、服薬管理をする人がいることはとても重要だ」と実感しています。
また、病院では医療機器や物品がすべてそろった、非常に恵まれた環境で働いていました。しかし在宅で看護となると、「ご自宅にあるもので何ができるか」を考えなくてはいけません。もちろんステーションに戻れば先輩に相談などもできるのですが、訪問する時はひとり。ご家庭によって大きく環境が異なる中、自ら判断する力が必要な仕事です。病院時代とは、そこが大きく異なります。
「一人で悩まず、みんなで考える」。チーム医療でお客様の生活を守る
—現在のお仕事内容、1日の流れを教えてください。
Mさん:9:00までに出勤し、事業所の朝礼後、〜12:00までと13:00〜18:00で訪問先をまわります。お昼は1時間の休憩を取っています。
当ステーションの訪問看護は交代制です。交代制である理由は、看護師が休みを取得しやすくするためと、多様な見方を取り入れることで治療やケアの可能性を狭めないようにするためです(※)。お客様ごとに主担当がおり、月に1度はその主担当が訪問しますが、その他の日は基本的に看護師全員で交代しながら、すべてのお客様を看ています。そういった背景もあり、お昼や夕方にステーションに戻ると、私は積極的にお客様の話をしています。元気だったとか、少し体重が減っているようだとか、その日の様子をできるだけタイムリーに共有したいんです。
お昼の時間は管理者や看護師全員がステーションに揃います。昼食を取りながらお客様の話をしますが、その一方で私はステーションのメンバーにも、元気のない人や困っている人はいないかな、と様子を見ています。
※ 規模が大きいステーションに多く、すべてのステーションが交代制を取り入れているわけではありません
—在宅における「チーム医療」について、訪問看護師としてどう感じていますか?
Mさん:できるだけ物事を柔軟に捉えるようにしていますが、やはり他のメンバーから「私はこう思います」や「こうした方がもっといいのでは」など、別視点の意見をもらえるのはとてもありがたいです。一人で悩まず、みんなで考えることができる。
お客様によっては、リハビリスタッフの方が訪問回数が多い場合もあります。退院前の病院での生活、ご家族のこと……看護師による訪問では把握できなかった情報を、セラピストが持ち帰りケアのヒントが生まれるなど、チーム医療ならではのメリットはいろいろありますね。
「住み慣れた家で安心して療養したい」を、叶えられる喜び
—現在のお仕事の中で、「これがやりがいだ」と感じる瞬間はどんな時ですか?
Mさん:やはり、「住み慣れた自宅で、安心して暮らし続けたい」というお客様の想いに寄り添い、その実現を支援できることですね。
ICUの場合、患者様は最長14日間の滞在というルールがあります。どんな方ともたった14日でお別れというのは、正直、寂しかったです。その後、どうしていらっしゃるかなと気になることもありました。その人らしい暮らしを大切にし、長期に渡ってケアができることに、日々やりがいを感じています。
—現在のお仕事の中で、「ここが以前の仕事とは異なり、大変だ」と思う時はありますか?
Mさん:訪問看護では、医療的に可能な処置に限りがある場面もあり、そういう時はもどかしさを感じます。
また、医師との連携は電話やMCS(メディカルケアステーション)などを活用しますが、どうしても病院に比べリアルタイム性に限界がある場面もあります。緊急時こそケアマネジャーや他の看護師と積極的に情報を共有し、チームで話し合いながら、長期的な視点で判断するよう心がけています。
病院看護師から訪問看護師というキャリア選択、考えてみませんか
—ソフィアメディに転職して良かった、と思うことがあれば教えてください。
Mさん:訪問看護未経験での入社でしたが、同行訪問や定期的な面談など、丁寧なフォローアップ体制があり、とても安心してスタートを切ることができました。
また、日々の業務の中でも、相談しやすい雰囲気やチームの温かさを感じており、安心して働ける職場だと思います。
—未経験で今から訪問看護ができるかな…と不安に思っている人に、メッセージをお願いします。
Mさん:「この患者様はご自宅でどのように過ごしているのだろう」と思っている看護師は、じつはどんな病棟でも多いと思います。それを知ることができるのが訪問看護です。
将来のキャリアを考えたとき、訪問看護師になるという道を私は歓迎します。私自身も未経験からのスタートでしたが、初めてでも、看護にブランクがあっても大丈夫です。訪問看護は、患者様の人生に寄り添いながら、自分のペースでスキルアップしていけるやりがいのある仕事です。一歩踏み出す勇気さえあれば、あとはきっと大丈夫。思い切って飛び込んでみてください。